いつかたどり着く

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「初恋ゾンビ」これほどはっきり、向き合わないことを選択した主人公がいたのか……

最近の初恋ゾンビが凄すぎる……


クリスマスのあの江火野さんを見てから、なかなか感想を書けずにいる私ですが、イヴと指宿くん関連で大きく話が動いています。
ものすごい色々あって何から書いたら良いかわかりませんが、結論から言うと、タロウは全てを知った上でイヴと一緒にいる選択肢を取りました。


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愛しさが溢れる


このイヴの泣き顔が、綺麗でつい見惚れてしまいそうになる。
普通の漫画であれば、これでハッピーエンドだったかもしれません。


事実、作者の峰浪りょう先生もこの話のサブタイを「ハッピーエンド」にするか迷ったそうです。



しかし、この回のサブタイトルはハッピーエンドにはなりませんでした。
では何か?


「呪い」


180度くらい違うようなサブタイですが、どちらでも正直おかしくなかったと思います。
確かにこれは、タロウとイヴの1つのハッピーエンドの形ではあるから……


ここに至るまでの何が凄いかって、タロウが自分や周りに起こっている色々なことを理解しつつ、重要なことに自分が向き合っていないことを自覚した上で、イヴと一緒にいることを決めたことです。


※クリスマスのあの江火野さんは以下記事参照
www.itutado.com

その手に真実を手に入れても


タロウは江火野さんに惹かれています。
そのことは、ある程度自分でも自覚していました。
ただそのことで、イヴが眠りにつくこともできず苦しんでいることは、指宿くんから聞くまで知りませんでした。


指宿くんは眠りにつくイヴも苦しんでいるイヴも見ているため、タロウが江火野さんに惹かれていることを知っています。


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そこに指宿くんの気持ちは……


自分の気持ちを押し殺し、タロウに普通に恋をさせてあげようとする指宿くんが見ていて辛い。
君は良い子過ぎる。どうしてそんなに自分を殺せてしまうんだ……


しかし、タロウはその申し出を断ります。
イヴ自身がタロウと一緒にいたいと思っていることと、自分の好きな子が「イヴ」であることを理由にして。


逆に、初恋ゾンビが見えなくなったら自分たちのことを忘れてほしいと指宿くんに伝えます。
もちろんそれは、指宿くんを蔑ろにしているからではありません。
彼女を想っているからこその、選択。


イヴを引き取ると言って聞かない指宿くんの手を、強く握る。
手のひらではなく、手の甲を。相手の想いを読み取らないように。
それは何も言わず、自分の願いを聞いて欲しいというタロウの一方的なお願いだということを象徴していた。


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手の握り方にも、意思が表れている


全部忘れて、本当の姿で幸せにならなきゃダメだ


このシーン、あえて載せなかったのでぜひ本誌で確かめてほしい。
至近距離で伝えた言葉。タロウの僅かに下がった頭。
目は書かれていないのに分かる。


ああ、タロウは指宿くんの目を見て言ったんだな……


全てを言わずとも、女の子であることを知っていると指宿くんに伝える。
含みのある言い方。それでも、指宿くんには充分だったのだ……
知っていてなお、イヴと一緒にいるということを、指宿くんに伝えたのだ……


今読んでも、泣きそうになってしまう。
自分の手を握るタロウの手の力が、今言える精一杯の言葉であることを示していて。何も聞かないでほしいという意思を示していて。
指宿くんはこれで、今のタロウの心情を察してしまうのだ。


感情がせめぎ合う。まさにそんなシーンだったと思います。
正直痺れました。そして苦しくて切なかった。
タロウにとって幸せにしたいのがイヴで、幸せになってほしいのが指宿くんなんだろうな……


タロウは自分が江火野さんに惹かれていること、そのことでイヴが苦しんでいること、そして何より、指宿くんが女の子であることを知ることになりました。
それらの事実を知った上で、彼はイヴを選びました。
ただし真実に到達することと、その真実に向き合うことはまた別でした。


タロウは、自分の心をかき乱すものに対して向き合わないという選択を取りました。無意識にそうしているわけではなく、向き合えば揺らぐのが分かっているから、意識的に。


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イヴのために、向き合わないと決めた


凄くないですか?


気持ちに向き合えないキャラはたくさんいます。
でもそのほとんどが、自分を守るため無意識に気づかないようにしているものです。
タロウのそれは違います。
イヴを守るために、イヴという存在を消さないために、意識的に向き合わない。


これほどはっきり、意識的に向き合わないことを選択した主人公はそう多くないでしょう。
向き合わないことに対して、意識しようが無意識だろうが同じではないか……そう思う人もいるかもしれません。
結果自体は、同じかもしれません。
ただ意識することは、向き合わないことで起こる結果から目を背けない、後悔しないということも示していると私は考えています。


だからこそ今回のタロウの選択は、イヴとの「ハッピーエンド」足りうるものなのだと思いました。

イヴという存在

初恋ゾンビは作中でよく、「呪い」という風に表されることもあります。
関わったものを縛る……という意味では、確かに呪いのような存在かもしれません。


「ハッピーエンド」にならなかったあの話は、タロウとイヴの繋がりが「呪い」となったことを示していた気がします。
かと言って、「呪い」であるイヴがいなくなるEND、つまりは他のヒロインと結ばれるルートがハッピーエンドかと言えばそうではない気がします。
結局は、イヴとの繋がりがタロウを縛っているからこそ「呪い」なわけで。
タロウが自分の心と向き合って、縛り全てから解き放たれてなおイヴを選ぶのならばそれもハッピーエンドでしょう。


イヴと一緒にいることを決めた次の回では、イヴがより自立した存在であることがさらっと描かれていました。


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タロウより先に、起きているイヴ


初恋ゾンビであるイヴは、タロウが寝ているときは自身も眠りに落ちていました。
しかし今は、タロウより先に起きている。
キョーコと同じレベルで、自立した初恋ゾンビであることが読み取れます。
あまりに自然に描かれていて、少し驚いてしまいました。これが峰浪りょう先生の怖いところ。


その後、恋人のように振る舞おうとする二人ですが、ちょっとした描写がまた切ない。


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触れたくて、寄り添うけれど


触れたい、が伝わる。


どちらかが、というよりもどちらも寄り添おうとしたのでしょう。
いつもなら触れられない現実から、触れているような部分で止めているのに、このシーンではそれを振り切っている。
それが、「触れたい」という想いを強く伝えてくるんですよね。


触れたいのに、触れられない切なさが滲み出てくるようなシーンでした。
少し心が痛くなってしまう……


ただイヴとタロウのシーンは切なさだけじゃないことは、きちんと伝えておきたい。
記事冒頭のイヴの表情は、愛しさに満ちていました。
この表情に至る2つ前の動きとして、タロウはイヴに向かって手を伸ばします。
その意図をイヴが理解して、頬を寄せるというこの一連の流れがたまらなく好き。


向き合っていないことがあるとしても、タロウとイヴの関係性が尊いことに変わりはないのだ。だってこんなに愛しさが溢れているんだもの……


イヴはタロウに何も与えられないと言うけれど、形には残らないけど心に残るものをたくさん与えていると思う。
それでもイヴは、きっとタロウに「何か」を与えたいのだと思う。その「何か」は、もしかしたら終盤に出てくるのかもしれない。

まとめ


ここ1ヶ月分書けなかったのをバーンと書いてみました。
なんとなーくですが、初恋ゾンビが完結したらブログは休止しそうです。
※転職してたらまた話は変わりますが


色々動いている初恋ゾンビはまだ落ち着く気配はなく、ついにタロウ父が登場する展開に。
本当はそれもこの記事で合わせて書こうと思ったんですが、江火野さんも出てくるので個別に書きたいと思ってしまったのだ……(正直)


何とか週2くらいで更新したいんですが、最近の初恋ゾンビはエグいくらい精神に来るので、感想も気力を使いなかなか手につかず(笑)
最近はコミスペだけじゃなく、まんが王国ラボでも記事書いてるので、お暇なときはたまに見てやって下さい~

lab.comic.k-manga.jp


画像引用元
初恋ゾンビ/峰浪りょう/小学館

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