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谷川史子の「ブルー・サムシング」が凄い作品だった

ブルー・サムシング (マーガレットコミックス)

ブルー・サムシング (マーガレットコミックス)

この作品は短篇集だ。
1つ1つの短編が違った顔を持っていて、読み手の心をそれぞれ違った感情で絶妙に揺さぶってくる。

ブルー・サムシング

ブルー・サムシングは、元夫が結婚する話だ。
別れた理由も、嫌いになったわけではない。けじめとしての別れだった。

結婚の知らせが届いた時、主人公が思い出すのはかつて二人が一緒にいた頃。
それはとても幸せそうで、傍から見ていてもお互いが大好きで、大切な人だと言うことが分かった。


かつてそんな想いを抱いていた人が、別の誰かと結婚する。

もう背中は押してあげられないけど、頑張ってと笑顔で祝福する主人公の姿が、とても切なかった。
彼女は笑顔だった。それでも私は切なかった。


大好きだったことが溢れていた。大切だったことが溢れていた。
今はもう、その人とは一緒にいられない。
前向きな応援とさよならだったけれど、読者には愛しかった気持ちが強く伝わりすぎて、誰かに側にいて欲しいと思うほどだった。

おかえりなさい

お義兄さん。
そう呼ぶには、本当の姉が必要だ。


主人公の家にはお義兄さんが住んでいる。ただし、いるべきはずの姉はいない。
別の男を作って、すでに家を出ていた。


義理の兄がそこにいる理由はない。
それでも、その家で作られている空気はまさに家族のものだった。


家族にとって、その空間はとても大切なものだった。
ちょっとしたことで崩れてしまうかもしれないけれど、みんなが家族としての関係性を大事にしていた。


義理の兄が家に帰って来る限り、「おかえりなさい」と言い続けると決めた主人公の姿は少し切なさもあったけど、同時に心が暖かくなった。
いつまでかは分からない。馬鹿な女の子かもしれない。
でも、そうすると決めて「おかえりなさい」という彼女の姿は、とても好ましかった。

途中の棲家

頑張りたいのに頑張れない女の子の話だった。
おまけに女の子は現実も知らなかった。


でも不思議と、心が苛立つことはない。
それどころか、頑張れと応援してしまう。


彼女は、頑張っていないわけではない。どうやって頑張れば良いかが分かっていないだけだ。


背中を押されて、どうすれば良いか分からなくて泣いて。
それでも最後は、歩き出した。涙を拭ってもらえたことも、あるかもしれないけど。


周りの皆がなんだかんだ助けてくれてはいるけど、それはやっぱり皆が彼女を頑張れって応援したくなるからなんだ。

終わりに


この作品を読んで、私はどうしようもなく人恋しくなった。
誰かと繋がっていたくなった。家でただじっとしていた1日が、急に怖くなって外に飛び出した。


夜9時を過ぎてただ外に飛び出した私は、川沿いを南下して海を目指した。
特に明確な理由はなかったけれど、海を見ればざわついた心が少し落ち着く気がした。


静かな夜だった。南下する私とは対照的に、屋形船が何隻か川を北上していった。
家族が川沿いで花火をしていた。カップルが川べりで、ビールを片手に夕涼みをしていた。


海に辿り着いた。しかしその前に、私の心のざわつきは落ち着いていた。
花火大会の帰りと重なって混雑するバスの中で、ぼんやりと灯を眺めながら家路に着いた。


夜にブルー・サムシングを読んだ時、一人暮らしでいる限り、私は何度も外に飛び出してしまうかもしれない。

※ポエムです。

清々と 1 (ヤングキングコミックス)

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