暁のヨナ18巻はゼノの巻でした。
ヨナと出会うまでの彼の人生を、淡々と語っています。
そこにあったのは深い孤独。そして今があることへの強い喜びでした。

- 作者: 草凪みずほ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: コミック
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一人だけ生き続けること
孤独。
この2つの文字に、時々強く怯えることがあります。
言葉にするのは簡単ですが、この言葉が表わす状況はとても辛いものです。
緋龍王の時代から生き続けているゼノは、緋龍王と他の3人の龍たちと、国を守るため戦い続けていました。
やがて緋龍王が亡くなり、他の龍が城を離れても、ゼノだけはそこに残りました。
緋龍王の残したものを守るために。
離れていても、互いの存在を感じられる。
一人でも、ゼノは時々彼らの存在を感じ取って、幸せな気分になっていたように見えました。
けれど、ゼノだけが年を取らない。
彼は死を許されない存在でした。傷つく度に頑丈になる、不死の戦士。
しかし体は再生されても、心の傷はそう簡単に癒えてはくれません。
仲間の死を感じることができてしまうゼノは、一人生き残った戦場で思いの丈を叫びました。
悲痛な叫びに、読んでいて胸が痛みました。
全てを分かち合った戦友が、自分を残して死んでいく。
緋龍王も、四龍もいない世界で、自分だけは嫌でも生き続ける。
それがどれだけ辛いことか。
想像はできますが、恐らくその想像の遥か上を行く痛みなのでしょう。
絶望の中にいた彼を、再び救い上げた存在もいました。
ゼノは彼女と共に生きることを選び、寄り添いあって暮らします。
けれど、病気の彼女はゼノのように長くは生きられない。
神に祈っても、その願いは届くことはありませんでした。
彼女を心配させまいと、優しい表情を保っているのがまたどうしようもなく切なかった。
どうにもならない不条理に、憤りを感じているはずなのに。
一分一秒でも、彼女と過ごす時間を大切にしようとする気持ちが、痛いほど伝わってきました。
彼が味わった孤独は、2回も大切な人を失って訪れる過酷なものです。
死なない、死ねない体を持ったゼノは、それを受け入れるしかなかった。
その深く辛い孤独の先に、今のゼノがいました。
そして見つけた希望
ゼノは長い旅の中で、自分が生きながらえていること、四龍の力が受け継がれ続けていることの理由を考えていました。
そして遠い未来、僅かな可能性ではあるけれども、四龍の戦士が集結し、緋龍王の元に集う未来を夢見ました。
それまでは、緋龍王の残した国を見守っていく。
かすかな希望を胸に、彼の長い旅が始まります。
長い旅を経て時代は現代に移り、ゼノはヨナたちと出会います。
キジャは集結した時に感涙していましたが、ゼノはその比ではなかったかもしれません。
長く辛い孤独の先に、もう一度巡り会えた仲間。
どれだけ嬉しかったか。きっと、言葉で言い表せるほど簡単な想いではないでしょう。
彼が身を挺して仲間を守るシーンは、その背景を考えると少し涙が零れそうになる。
やっと会えたんだ
「やっと」と言っていますが、そんな生易しい時間ではない。
彼は2000年もの孤独を経て、彼らに会うことができました。
そこにあるのは確固たる意思。全てを投げ打ってでも仲間を守りぬくという強い意志でした。
多分ではありますが、ゼノはなるべく自分の力を晒したくなかった気がします。
登場してから長いこと、彼が力を使うシーンは無かったのがそれを表しています。
その力は、異質だから。
大切な人と同じ時間軸で生きられない、元凶だから。
それでも、大切な人を守るためになら、その力を行使することを躊躇わない。
ゼノというキャラの深さが、存分に描かれていました。
正直ちょっとゾクっとした。
終わりに
ゼノはヨナを認めているけど、ゼノにとってヨナはどういう存在なのかはやはり気になりました。
四龍は彼にとって、かけがえのない仲間です。そういう意味ではヨナもそうではありますが。
緋龍王としてのヨナを、ゼノがどう捉えているかがまだ見えないなあと。
しかしこれだけハクとヨナが出ない巻も珍しい。ハクヨナ成分は足りませんが、濃密で素晴らしい巻でした。
またアニメ化して欲しいなあ。ストックは1年後くらいにはそこそこあるでしょ、多分(笑)
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