いつかたどり着く

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「初恋ゾンビ」その涙が、愛しさの証

最近の初恋ゾンビは色々と凄まじい。


実に考察しがいのある展開が続いていましたが、私はシンプルにキャラの心情に迫ってみようかなと思います。
指宿くんと、江火野さん。そしてイヴ。
3人のヒロインは、今後タロウに対してどう接していくのでしょうか……?

指宿くんの涙

先週号も沢山印象的なシーンがありました。その中で1つを選べと言われたら、私は指宿くんが涙を流していたシーンを挙げます。


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溢れ出る涙


これの何が印象的かと言うと、その直前まで指宿くんは泣いてなかったんですよ。
タロウが血を流して倒れていて、タロ父が彼を大事そうに抱えていました。
指宿くんはその現場を見ながら、タロ父とイヴについての会話をしています。
つまり、指宿くんはタロウの状態を認識していたわけで。


その時の指宿くんは泣いていませんでした。
ただ、タロ父も倒れた時、指宿くんはタロ父のお腹の辺りに頭を置く形になっていたタロウを、自分の元へ引き寄せます。
それは、タロウの頭が安定していない状態だったので安定させるために引き寄せた行為だったのかもしれません。


私はそれだけじゃなくて、タロウを自分の側に引き寄せたいという気持ちが強くあったのではないかと思っています。


自分の膝にタロウの頭を置いて、マジマジと指宿くんは彼を見る。
頭から血を流している、痛々しい姿。
それを見て、指宿くんの目からは涙が溢れていました。

指宿くんが泣いているのは、タロウの痛々しい姿を見たからなのか。
苦しむタロウに何もしてあげられない自分の不甲斐なさを嘆いたものなのか。
恐らくは、その両方だったのでしょう。


彼女の表情が、泣き顔が、タロウへの愛しさを表しているのが分かって、読者まで辛い気持ちになってしまいそうでした。


今週号では、タロウ父がそんな指宿くんの姿をタロウに伝えています。


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タロウ、気づいてくれ


タロウは聡いが故に、イヴを守るために不都合なことに気づかないようにしていました。
しかしそれは、他の大切な者を傷つけるしかない道で。
イヴを選択しても良い。でも自分を好いてくれる女の子の気持ちは、きちんと受け止めて欲しい。
そうでないと、彼女たちの気持ちは行き場を失い彷徨うしかないんだ……


私はタロウの向き合わない意志を尊重したい気持ちもありましたが、やはり向き合わない限り誰も前に進めないのでしょう。
1つ分かっていることは、タロウはどの選択を取っても辛いということかな……

今後への布石

先週号と今週号で、まーた多くの布石が散りばめられています。
こんなに考察しがいのあるラブコメは本当に珍しいと思う。
もはやラブコメじゃなくて、ラブシリアスだよねこの作品(笑)


例えば、先週のもう一人のイヴ。


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別人の影が見える


イヴがタロ父の初恋ゾンビに取り込まれそうになった時に出現。
タロ父の初恋ゾンビを食べるという、これまでに無い動きを見せました。


で、イヴに見えた別人の影というのがまた気になるところで。
私はタロウ母かなとも少し思ったんですが、恐らくキョーコなのでしょう。
容姿というよりは、このシーンで示したかったことを考えると。


私がタロウ母と思ったのは、タロウ父の初恋ゾンビにはやはりどこかタロウ母の影があり、それを食べたイヴに影響が出た……と思ったから。
ただ、「そう望んでしまうから」という言葉から考えると、キョーコの可能性が高いでしょう。
なぜなら、8巻でキョーコがイヴに伝えたことこそ、初恋が成就することが初恋ゾンビの「本当の望み」だということなのだから。


もう一人のイヴは、キョーコの影を見せることでそれを暗示していたのだと思います。
タロウが隠していることは、指宿くんが女の子であるということ。
そしてイヴがそれを知れば、タロウの初恋が成就されることを……望むのでしょう。
例えそれで、自身が昇華(浄化でもいいけど)することになっても。


この演出力は本当に凄い。


ちなみにこの記事を書くまで、自分の中でも上記が上手く整理できていませんでした。
文章にするって大事だね(知らん)


で、少し気になり始めているのは、タロウがこのままイヴといるのは危険だと思い始めている人が増えていること。
タロウ父もそうですが、今回の件で一姫もそう思い始めている節があります。


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いつになく、真剣な姉の言葉


指宿くんは負荷がかかるような行動をしなければ大丈夫だろう……とこれまでは思っていたかもしれませんが、今回の件でタロウを守りたい気持ちが強くなっているはずです。
だからこそ彼女は、イヴの昇華の道を探る。
例え、自分の恋が成就しなくても。


久しぶりに、私の大好きな幼なじみが登場した時に、今後何が起こるかを私は察しました。
ああ、指宿くんは本当にその選択を取るのだな……と。


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いつも通りを装う、挨拶


私は江火野さんが、いつも通りを装う姿が悲しくて仕方なかった。
辛い気持ちをこらえているのが、容易に読み取れてしまうから。


江火野さんを見た時のイヴの反応が、伝えている。
それは指宿くんが、江火野さんとタロウを結ぼうとしていることを。
それが最も良い形だと信じて……いや、思い込もうとして。


何というか、指宿くんはいつも一人で背負い込もうとしちゃうんですよね。自分の気持ちを押し殺して。
ただ、指宿くんの気持ちを知った時、タロウへの想いを知った時、江火野さんはどう思うか分かってない。
友達である江火野さんが、指宿くんが自分の気持ちを殺して、自分とタロウをくっつけることを良しとしないことを想像できていない。


私は江火野さんに指宿くんの気持ちを知ってほしい。
受け止めて、でも譲ったりせず、ちゃんと対等に並び立とうとしてくれると思う。
私は江火野さんの弱さも認めてあげたい。多分苦しむと思う。眠れない夜を過ごすかもしれない。
でも悩み苦しんだ先に、輝こうとする江火野さんが見たい。


エビナーの私が信じないで、誰が江火野さんを信じるんだ……!!


ということで、まだまだタロウや指宿くん、江火野さんには悩み苦しんでもらいたいと思います。
この二度と体験できないような青春を駆け抜けた後の彼らに、私は出会いたい。
どんな姿になっているか、それを見届けたいのだ……

まとめ


様々な布石が散りばめられているので、読み返す度に新しい何かを見つけている気がします。
難しいことも多いけど、キャラの「愛しさ」が伝わってくる作品が好きな私にとって、初恋ゾンビは最高の漫画なんです。
届けたいのに届けられない愛しさに、いつも胸が苦しくなってしまうのだ……


今後しばらく、鍵を握るのは指宿くんの行動でしょう。
タロウと江火野さんに、どのように干渉していくのか……気になって仕方ありません。


江火野さん関連のポイントは、タロウにあげた手袋でしょう。
外にいる時のタロウは、ずっと上着のポケットに手を入れています。


それは、手袋をつけなくてもいいように。
すれば江火野さんを意識してしまうから。
この行為自体が、意識している証拠でもあるのですが……はたして。


©峰浪りょう『初恋ゾンビ』/小学館

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