いつかたどり着く

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その輝きは、誰に恋しているからなのか。「初恋ゾンビ」が切なくて、苦しい

私は江火野さん好きである。


なので、初恋ゾンビの感想を書く時の多くは、江火野さんにスポットが当たっている話が多い。
しかし、江火野さん好きである私でも、時折指宿くんが見せてくる「切なさ」に苦しくなってしまう。


江火野さんにももちろん切なさを感じるシーンはありますが、彼女の場合は青春の甘酸っぱさを感じさせるシーンが今のところ多い。
一方指宿くんは、男性と偽っているというハンデから、想いを素直に伝えることができない部分があり、そのあたりに強く切なさを感じています。


今回の話でも、私は指宿くんにどうしようもない切なさを感じてしまいました。
指宿くんの苦しさが、紙面を越して伝わってきて。


それはきっと、薄々感じていたこと。気づかないようにしていたこと。
読み終わった後、私は指宿くんにかけるべき言葉見つからなかった……

タロウの選択

先週からタロウと指宿くんは、初恋ゾンビが見えるようになったタロウの曽祖父の元を訪れます。
そこにいたのは、エロじじいと、イブ以上の自我を持った初恋ゾンビ「キョーコ」でした。


初恋ゾンビが見えなくなって、今また再び初恋ゾンビが見えるようになったというタロウの曽祖父。
目的としては、どうやったら「初恋ゾンビが見えなくなるのか」を知ることでした。
指宿くんを苦しめ続けた初恋ゾンビからの、開放。


そうすることで、指宿くんは一人の女性としての歩み始めることができる。
タロウに女の子として接することができる。
その方法を指宿くんが知りたいと思うのは、当然のことでしょう。


ただ、ここで1つ物語の方向を決定づける発言をタロウがしているんですよ。
言い淀むことなく、はっきりとその事実を指宿くんに告げる。


初恋ゾンビが見えなくなる方法がわかっても、実行はしないということを。


それを聞いたときの指宿くんの表情が、驚いているものの、驚きすぎてはいない。
きっとそれは、ある程度想定していた答えだったかなのでしょう。


理由も、もう分かっている。なぜなら、指宿くんでさえそういう気持ちが多少はあるからだ。


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イブの側にいるため。側にいてもらうため。


最近の「タロウにとってのイブ」を見ると、読者からしてもその理由は全く不思議ではありません。
イブにずっといて欲しいと思っていることも、作中で明らかにされています。


イブのために耐える。
指宿くんのその問いに、タロウは答えません。
指宿くんもまた、それ以上追求したりはしません。


多分、お互いにそれ以上の「理由」を出したくなかったのでしょう。

ともあれ、タロウの選択は、イブと共に歩むことでした。
もちろん、「共に」の形はまだ定まっていませんが、1つの大きな選択であることは間違いありません。
この選択が、イブや指宿くんだけではなく、江火野さんとどう関わってくるのか、非常に注目です。

その輝きの元は、指宿くんじゃない

初恋ゾンビの輝きは、相手をどれだけ好きかという想いに比例します。
初恋の相手を未だに強く想っているのならばその初恋ゾンビは強く輝き、逆ならばただ浮かんでいるだけの存在で。


タロウの初恋ゾンビであるイブは、キラキラと輝いています。
それはタロウがまだ自分を想っていてくれている証拠、そんな風に指宿くんは思っていました。
タロウもまた、その認識です。


ただ、祖父の初恋ゾンビと出会った時に、指宿くんだけが、ある事実に気がついてしまいます。
曽祖父が、初恋ゾンビの元となっている人物と、ほとんど面識が無かったということを聞いた時に。


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この時点で、正直まだ私も全容が見えていなかったのに、指宿くんだけが何かに気づいている。
それは、薄々感づいていたこと。気づかないようにしていたこと。
そしてきっと、分かりたくなかったこと。


一度は輝きを失った「初恋ゾンビ」のキョーコ。
曽祖父が疲れ果てた時、久しぶりに目があって、ずっと側にいてくれと言われた時。
初恋ゾンビを通して「キョーコ」を見るのではなく、「初恋ゾンビのキョーコ」を見るようになった時。
初恋ゾンビのキョーコは輝きを取り戻したという。


指宿くんが、話の途中で席を立つ。
ここでようやく、話が繋がった。指宿くんの思っていることが分かってしまった。
それでも、言葉にしたくなかった。それを認めてしまえば、どうしようもないくらいの切なさが生まれてしまうからだ。


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言葉にできない切なさが、紙面からにじみ出ていた。


イブの輝きこそ、タロウがかつての自分を想っていてくれていることの証明だと思っていた。
キラキラと輝いていたイブを見て、嬉しいと思った。
でもそれが、「イブ」に対するタロウの恋愛感情からくる輝きだと気づいてしまって。

悔しいのだろうか。悲しいのだろうか。
分からない。
ただ、次のページの指宿くんの表情から、言葉にできない苦しさが伝わってきた。


指宿くんの気持ちを考えると、切なくて苦しい。
タロウがまだ、その事実に気づいていないのがまた切なさを増加させているのだ。
タロウ自身は、まだ指宿くんに対する気持ちを整理できていないと思っていて、イブそのものに恋している事実に気がついていないのだ。
あるいは、気づかないようにしているか。


ああ、呼吸が苦しくなるくらい、これは切なすぎる。
会話の途中で席を立ち、駆け出した気持ちがよく分かる。
どうしようもない感情が、胸に広がっていくのが伝わってくる。
これが切なくないわけがない。


胸の痛む音が聞こえた。
指宿くんにかけるべき言葉を、私はまだ見つけられない。

終わりに

物語の根幹に大きく関わってくるような話でした。
最も、あと2話くらいはこのシリーズが続くと思われるので、何かの形で指宿くんの心を救うような展開があるかもしれません。
キョーコの依頼が、何かしらのアンサーに関わってくるのでしょう。


イブそのものにタロウが恋しているとしても、イブと指宿くんはやっぱり無関係ではなくて。
無関係じゃないからこそ、江火野さんと違って指宿くんにときめいた時はイブが停止しない。
……とかね。じゃないと指宿くんが救われない。


そうそう、6巻の表紙出ました!江火野さんが可愛い!!


※試し読み
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