いつかたどり着く

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いつかたどり着く

漫画とかの駄文書く。

それはまさに呪いのように。死んだ妹の恋人と交際する「春の呪い」が、凄い

「春の呪い」という作品を、ご存知でしょうか?


ブログの読者層を考えると、男性が多いため知らない方も多いのではないでしょうか。
(このマンガがすごい!WEBのオンナ編で1位になった作品ではありますが)


この漫画は、本当に凄い。
2016年を代表する作品になる、そんな風に思ってしまうレベルです。

恋人は、死んだ妹の恋人

物語は、妹・春を失った夏美と、春の婚約者だった冬吾の物語です。
夏美にとって、妹の春は世界で一番大切な存在でした。


ずっと二人一緒にいる。そんな風に思っていたこともあったようです。
春にとっての自分もまた、そんな存在である
そんな風に考えていたところに、冬吾という存在が表れて、春の1番を奪っていく。
殺したいほど憎い相手だった、回想で語る彼女の想いは嘘ではないでしょう。


それほどまでに、彼女は春のことが大好きだったから。


だからこそ、今の状況に、気が狂いそうになっていました。
当然でしょう、最愛の妹の恋人と、自分が今付き合っているのだから。


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先ほどまで繋がれた手を、震えながら握りしめる表情が、いかに苦しいかを物語っています。
作中で深く説明されているわけではありませんが、なぜ苦しいか、容易に読み取れます。


自分の手を握りしめた冬吾の手は、かつて妹の春の手を握っていた手。
春の手を握りしめるはずだった手が、今は自分の手を握りしめていて。


大好きな妹が、一番大好きだった人と付き合っている


その事実が、どうしようもない罪悪感を彼女に与えていました。
いっそ楽になれたら、そう思っても不思議ではありません。


ただし、彼女がその一歩を踏み出すことはありません。
その手はもう、握りしめられてしまっているのだから。


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このシーン、視線の話をしているのに後ろ向きなんですよ。


「うすうす気がつきはじめている」というのが、ポイントでしょう。
本当は、彼女は気づきたくないんですよ、それに。


今でも妹のことを想っていて欲しい。自分ではなくて、自分の中にいる春の面影を探していて欲しいと願っています。
だから、彼女は気づきたくないんです。
その視線に気がついてしまったら、自分の中にある春への罪悪感が爆発してしまうから。


この後ろ向きのシーンは、そんな彼女の内面が読み取れた非常に印象的なシーンでした。

それは呪いのように。想いは行き場を失っていく。


冬吾サイドを見ると、冬吾は春には特別な感情を抱いていたことはありませんでした。
親の敷いたレールに沿って、これまでの人生を歩んできた冬吾。
春との交際もまた、親の指示に従ってのことでした。


夏美の第一印象は、暗い女というあまり良くないものでした。
ただ、春の見舞いに訪れた病院で、それまでと違う夏美の姿を見て、冬吾は少しずつ変わっていきます。
明朗な快活さと、ふとした瞬間に見せる暗さ。


その歪みに、彼は惹きつけられてしまっていたようです。
春の見舞いに病室を訪れながら、無意識に姉の夏美を探していて。


春が死んで付き合うように仕向けたのは、他ならぬ冬吾でした。
そして自分の知らなかった春を知るために、冬吾と春が二人でいった場所を訪れることを条件に、付き合う夏美。


冬吾は夏美が自殺するのではないかという不安を持っていて、「お前が死ねば俺も死ぬぞ」という言葉を、彼女に突きつけます。
それはかつて、4月に発した言葉。
その時彼女は、冬吾が死んだら妹が悲しむから止めてくれと伝えました。


9月に発した際には、彼女の反応は変わっていました。


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私が悲しいんですよ


冬吾は、その言葉を情につけ込む嘘だと言いました。
嘘だと思いながらも、どうしようもないくらい、嬉しく思ってしまう自分がいて。


この言葉を聞いた直後の、冬吾の顔が実に辛そうで、心が締め付けられました。
夏美が好きだと告げた時、冬吾は淡々としていました。本当にそうなのか、疑わしいほどに。
でも苦しそうな表情こそが、それが事実であることをこれ以上無く読者に伝えてきました。


好きだからこそ、苦しいのだ。


嘘だと思っている彼女の言葉に、心を振り回されて。


この漫画は春の呪いというタイトルですが、まさに適切なタイトルだと僕は思っています。
だって、苦しそうな表情でしか、二人の「好き」が伝わってこないのだから。


本来、「好き」という感情は幸せなものであることが多いでしょう。
幸せな気持ちであるものが、苦しそうに見える。これはまさに呪いなのだ。


自分で出した条件を忘れ、冬吾とデートをしてしまったことから、夏美もまた惹かれていたことが分かります。

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惹かれている相手に想われている。
これが、そんな時にする表情だろうか。


妹を裏切っているという罪悪感と、自分への好意を踏みにじったという罪悪感。
行き場のない想いと、彼らはどう向き合うのだろう?


想うことが苦しくて。想われることも苦しくて。
これはまさに呪いなのだ。

終わりに

正直に言うと、凄い漫画です。
2016年を代表する漫画になる、個人的にはそれくらい高い評価です。
ぜひ読んでもらいたい、おすすめの作品です。


comic.pixiv.net


とりあえず、読んでみてください。1話で良さが分かる。


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