暁のヨナ23巻は、全体的にもどかしい。
進む方向に進めなくて、それに抗う姿が描かれています。
展開だけでなく、届かない想いもまたもどかしい。
とにかく23巻は、もどかしさを読者に抱かせる巻です。
ただその彼らのもがく姿は、人間としての強さ、確かな絆を感じさせる何かがありました。
たとえ、その歩みの先に誰がいても
真国についてから、異国ということもあってか予想外のことばかりがヨナ達一向に降りかかっていて。
自国を平定だけではなく、他国にも目を向けなければならない。
真国で沸き起こる高華国との戦の機運を、ヨナはその目で見てしまって。
止められない流れに、覚えたのはおそらく怒りだったのでしょう。
多くの血が流れることを、多くの人が厭わないことに。そしてそれを止められない自分に。
読者は1つだけ、戦を阻止する方法があることを知っていました。
あくまで、可能性の問題。必ずしも止められるわけではなくて。
それでも可能性があるならば、当然その方法を選択すべきだと、普通ならば思うのかもしれません。
でも、その方法はヨナに強さを強いる。
親の仇であるスウォンに、真国を降伏させる話をつけに行く道だから。
このシーン、はじめはツライ道を歩むヨナを強調するシーンだと思っていました。
もちろん、そういう意図もあるのは間違いありません。
でも、一番いいたいことは他にありました。
己の信念を貫くために、茨の道でも歩むことを止めないヨナ。
当然ハクは、そんなヨナを一人往かせることなんてできるわけがなくて。
自分を傷つけてでも、国や人を守ろうとするヨナだから、自分が守らなくてはとハクは思っていて。
例えその歩みの先に、いまだ憎いスウォンがいるとしても、ヨナとともに行くというハクの強い決意こそが、このシーンで1番伝えたかったことでしょう。
夢見た未来が、今なおハクの胸で黒く燃えている。
それを理解してなお、ヨナとともに歩もうと決めるハクが、どうしようもなくカッコイイのだ。
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暁のヨナの素晴らしいところは、男性キャラのカッコよさが、同性から見ても本当にカッコイイ部分だと思います。
戦に対して深い怒りを抱いたヨナを、地につなぎとめるかのように繋いだ手も、なんというか憎らしいくらいいい。
元々ハクは肉体的にも精神的にも強さを感じさせるキャラですが、16巻の邂逅を乗り越えてから、さらに凄みが増した気がするのは気のせいではないでしょう。
あの邂逅を乗り越えることができたのは、ヨナと、そして仲間がいたから。
過去のハクより今のハクが強くなったのならば、間違いなくそこには仲間の影響があって。
今のハクは、ヨナを一人支え続けたハクではない。
時には背を預け、寄りかかれる仲間がいるからこそ、どん底の憎しみを乗り越えた今がある。
四龍が囚われた時、ハクから紡がれた言葉がそれを感じさせてくれて、なんというかもう、四龍に聞かせたかった(笑)
積み重ねた日々が、確かな信頼と絆を生んだ。
それだけの旅を、彼らがしてきたことをあらためて感じることができました。
今はまだ、その言葉を押し殺して
緊迫した状況が続いている中でも、ヨナとハクの絡みは時に幸せな気持ちにさせられて、時には苦しい気持ちにさせられてしまいます。
この巻はヨナとハクが二人きりになることが多く、ちょっとしたシーンでニヤニヤしてしまったり。
町中で姫さんと呼ぶことをユンに注意されていたハクが、いつもと違う呼び方でヨナを呼ぶシーンなんて最高でした。
この赤面顔、幸せになっちゃいますね!
22巻で自分の感情をヨナが自覚してから、もう赤面する顔がかわいくて仕方ない。
やっぱり恋する乙女は最強です。
ヨナって呼ばれる破壊力をお姫様は痛感していますが、読者もあらためてヨナの赤面顔の破壊力を痛感していました。
こんな風に幸せな気持ちになれる一方で、この漫画は苦しいくらい胸を締め付けてもくる。
疲れて倒れたヨナを、寝床の横で優しげに見つめるハク。
ヨナも思わず愛しさが溢れたのか、ハクの頭をナデナデして。
微笑ましいシーン。でもそれが、想いを募らせることもある。
苦しいなあ。どうしようもなく苦しい。
心が叫びたがっているのに、それを押し殺すべきだとハクが判断しているのが苦しい。
ヨナを想い、ヨナの重荷にならないように、心を押し殺すこのシーンがたまらなく切ないのだ。
ハクの想いは、いつも読者の心をザワザワさせる破壊力があるからズルい。ズルい!!
終わりに
毎回感想を書くのが遅くなってしまい、申し訳ないです。
花とゆめ最新話を読んでいたら、感想が書けてないことを非常に後悔して、今回記事にしました。
読み終わった直後が、やはり一番色々な感情が沸き立つので、その部分をちゃんと言語化しておきたいなあ。
男性でもめちゃくちゃ楽しめる少女漫画なので、未読の人ぜひ読みましょう!