今、この漫画が読める幸せを噛みしめる。
そう言える漫画は、個人でいくつかあると思いますが、私にとって「初恋ゾンビ」とはそういう漫画です。
いや、今や多くのラブコメ好きにとって、初恋ゾンビはそう呼びたくなるレベルの漫画になっています。
単行本8巻は、初恋ゾンビという存在の核心に近づく巻です。
そして、なかなか表に出せない指宿くんの「恋心」に、スポットが当たっている巻でもあります。
江火野好きと思われがちな私ですが、指宿くんも大好きなので、この巻の破壊力ときたらもう……衝撃が走るくらい痺れた。
あ、江火野さんが全く出ないわけじゃないです。
健全で魅力的なボディーが、8巻でも読者を魅了してくれてるよ!
でも、この江火野さんの可愛さが霞んでしまうほど、8巻は指宿くんが圧倒的に輝いていて。
それは、どのヒロインが好きかなんて瑣末な問題を超えて、読者の胸に響いてくるのだ。
青春と恋愛の全てがここに。「青のフラッグ」は今年を代表する漫画になる - いつかたどり着く
10年ごしの、指宿くんの気持ち
単行本8巻では、イヴ以外の自我を持った初恋ゾンビ「キョーコ」が登場します。
タロウの曽祖父の初恋ゾンビであるキョーコですが、つい最近になってまた見えるようになったという経緯があって。
つまり、初恋ゾンビが見えなくなる方法があるということで。
タロウと指宿くんは、その方法を聞きにわざわざ曽祖父の元を訪れていました。
ただ、それを実行するかどうかは、タロウと指宿くんで異なります。
指宿くんは、初恋ゾンビが見えることで苦しんできました。
本来の性別を隠し、自分を男と偽って生きてきて。
初恋ゾンビが見えなくなれば、女性として臆することなく生きていける。選ばないはずがありません。
でも、タロウの選択は、初恋ゾンビが見えなくなる方法が分かっても実行しない……でした。
指宿くんは、タロウがそれを選択することも、なぜそれを選択するかも薄々分かっていたのでしょう。
だから、切ないのだ。
イヴと一緒にいるために、その選択をすることを、指宿くんだから分かってしまうのだ。
タロウの側にいて、タロウに取ってどれだけイヴが大切な存在かを、指宿くんはよく知っているから、タロウの選択が理解できてしまうのだ。
イブの輝きが、「指宿くんへの想い」ではなく、「イヴそのものへの想い」だというのも、分かっていたのだ。
これが切なくないわけがないだろ!!
タロウは、イヴ自身を好きになっていて。イヴと共に生きる選択をして。
自分がモデルとなった初恋ゾンビそのものに、好きな人が恋心を抱く。
やりきれない思いが世の中にどれだけあるか分かりませんが、指宿くんより強いケースがどれだけあるんだってレベル。
指宿くんが、初恋を諦めて、タロウを諦めて、側を離れようとする選択肢を取っても、全く不思議ではありません。
なので、初恋相手と両想いの状態でその恋の成就を拒否することが、初恋ゾンビを見えなくする条件と聞いた時、指宿くんはそれを実行しようとします。
これまでの想いを、振り切って。
ただ、指宿くんが何のために初恋ゾンビを見る力を失いたかったかを、思い出して欲しい。
もちろん、平穏な生活を取り戻し、女の子として生きるためです。
でも、女の子として生きてやりたいことは、何なのでしょうか。
決まっています。女の子として、タロウの前に立つことです。
本当の姿でタロウの前に立つために、自分を偽りながらも、タロウへの気持ちをずっと育んできて。
それなのに、初恋ゾンビを見る力を失うために、タロウとの恋を終わらせるなんて、それはあまりにも切なすぎる。
この力を移したタロウを、恨むこともあったでしょう。
それでも、会いたかった。会えば、きっと何とかしてくれると信じていた。
心を分かち合えると思っていた。
会って、気持ちを伝えたかった。
タロウとの恋を諦めるという選択肢を前にして、指宿くんのホントの気持ちが溢れた時、読者は震えるほど悶えてしまうのだ。
心の痛む音が聞こえた。瀕死になるわこんなの!
指宿くんの痛みが、まるで自分の痛みかのような錯覚さえ覚えるほどの破壊力。
苦しい。私は指宿くんだったのか(動転してる)
心がすりおろされるような感覚。
指宿くんのホントの気持ちが、紙面を超えて溢れてきました。
こんなのを見せつけられたら、誰もが等しく指宿くんを応援せずにはいられないのだ。
この恋の行方がどうなろうとも、指宿くんの気持ちが報われて欲しい、心を救って欲しいと思わずにはいられないのだ。
それは、江火野好きだろうがイヴ好きだろうが、同じなのです。
指宿くんのこのシーンは、それくらい全ての読者の心を揺さぶってしまいました。
結局、指宿くんは何一つ本当のことをタロウに伝えることはありませんでした。
けれど、指宿くんの想いが届いたのか、タロウが自分の心を指宿くんに晒します。
側にいて欲しい……ということを。
もちろんそれは、男女の関係を示唆するようなものではありません。
それでも、指宿くんが側にいてくれることで、救われていたという言葉。
指宿くんを必要とするタロウの言葉を聞いた指宿くんがね……可愛くて。
タロウは当然、無自覚です。
無自覚でも、その言葉は一時的にとは言え、指宿くんの心を満たす暖かい言葉でした。
タロウが心を晒したことで、指宿くんの隠していた気持ちが、表に溢れていきます。
嬉しさも、愛しさも、溢れてきて。
少し茶化しながらも、タロウを愛しげに見つめる瞳。
今はもう、気持ちが隠せない。
隠さなきゃという思いを超えるくらいに、タロウを好きという気持ちが強くなってしまっているのだから。
イブスキー(指宿くん好き)なら当然分かるし、初恋ゾンビ好きでも普通に分かってしまうレベル。
好きが隠しきれなくなっていて、きっと凄いシーンが来ると……と。
洞窟にて、側にいて欲しいとタロウに頼まれた際に、返事がまだだったことを思い出す指宿くん。
タロウは言われるまですっかり忘れていて、なぜわざわざ蒸し返したのか。
決まっている。
気持ちを、伝えたかったのだ。
祭りが始まると、太鼓の音が山に響き、心地よい音が一体を包む。
タロウは昔きたことを思い出しているのか、その光景を懐かしそうに見つめて。
指宿くんは、タロウのそんな様子を横で伺って。
タロウの意識が外に向かっていることを見計らって、呟くのだ。
今まで言えなかったこと。今まで言いたかったこと。
秘めてきた自分の、本当の気持ちを。
初恋ゾンビの中でも、屈指の痺れる1シーン。
画像はあえて使わない、絶対に単行本で確かめて欲しい。
ため息が漏れて、指宿くんを愛おしく思わずにはいられないのだ。
今はまだ、伝えられない気持ちなのは確かだ。
それでも、言葉にしたかった気持ちなのだ。
指宿くんの恋は常に「切なさ」がつきまとう。
このシーンもまた、直接言えない切なさがあります。
でもそれ以上の愛しさを含んでいるから、抜群に素晴らしいシーンとなっていて。
痺れるくらい、最高でした。
この後のやりとりも、ニヤニヤ必須なんですよ。
当然のごとく、タロウは指宿くんの言葉を聞いていません。聞こえないように言っているので、当然ではありますが。
で、タロウに直接かけた言葉は、これです。
ああもう、可愛いなあ!!
これが、今の指宿くんの精一杯。
読者から言わせると、嬉しさを隠しきれない表情で何カッコつけてるんだよ!って感じなんですが(笑)
ニヤニヤさせてくれる素晴らしいシーンであると同時に、指宿くんの心に確かな火が灯ったのも感じられて、良かったのだ……
新学期の江火野さん
8巻は、指宿くんを中心とした夏休みの話がメインですが、巻末の方では新学期が描かれています。
自分の妄想と、男(指宿くん)と過ごした夏休みに、潤いがなかったとでも言いたそうなタロウの思い出に、1つだけあるきらめき。
それが、江火野さんとプールであったことでした。
席が隣の幼なじみ。
いつものように、二人で交わす他愛もない会話。
その中で、ふと漏れる、夏休みを長く感じたという江火野さんの言葉。
私の枕がサンドバックと化した瞬間だった
(画像引用元:初恋ゾンビ/8巻/峰浪りょう/小学館)
指宿くん話でちょっと油断していたところに、強烈なパンチを喰らってしまいました。
新学期早々、破壊力あるシーン過ぎるでしょ峰浪りょう先生!
なんで夏休みが長く感じたかなんて、読者は容易に分かっちゃうだろこんなの!!
はっきりと会いたかったと言われるより、何というか、「好き」が滲み出てくる感じが憎らしい。
恋心を自覚していない江火野さんが、新学期というシチュエーションで、これほどタロウに対する好意を示せる言葉は、他にない。
この言葉こそが、無自覚な江火野さんの恋心を表現する最適解なのだ。
峰浪りょう先生に100点挙げたい。
こんなに甘酸っぱくて素晴らしいシーンなのに、机になりたいって思っちゃう自分が悔しい。
終わりに
全ての指宿くん好きに捧げるべく書いた記事になってしまいました。
まあ、最後に江火野さんへの溢れる気持ちを書いてしまっているけど(笑)
サンデーでカラーになったりしている初恋ゾンビですが、やっぱりもっと読んで欲しいという気持ちに変わりはありません。
宣伝部長……は峰浪先生の愛猫タビちゃんなので、宣伝課長として広報活動に励もうかな!
※タビちゃんは公式宣伝部長ですが、私の宣伝課長は自称です(笑)
相当数フォロワーさんにも買ってもらったし、このブログ閲覧者にもかなり初恋ゾンビを買ってもらいました。
この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます!
ただ、目標は初恋ゾンビが全巻平積みで本屋に並んでいる状態にすることなので、一層応援していきたい(笑)
そうそう、「サンデーヒロイン 夏のひとりじめフェア」で初恋ゾンビの暑中見舞いが既刊を買うことで入手できるということだったので、対象書店にて既刊を買い占めました(笑)
【悲報】俺氏、「サンデーヒロイン 夏のひとりじめフェア」目当てに新宿ブックファーストで初恋ゾンビと天野めぐみはスキだらけ!の既刊をあるだけ買ったものの、フェアやってなかったのか配布方法が異なったのか、「暑中見舞い」がついてなかった pic.twitter.com/kLld1uvLt4
— ふな@雑多 (@hosome252) 2017年7月18日
まあ、その書店でのフェアは単行本発売日の翌日からだったので、買い占めた既刊には1枚も暑中見舞いは付いてなかったけど(泣)
※天野めぐみはスキだらけ!の既刊でもおんなじことしました。みんなちゃんと時期とお店は確認しよう(戒め)
しかし私も、一旦何冊初恋ゾンビ買ってるんだ……(今回ので40冊を超えてしまったw)
ここまで読んでくれた方で、もし全くの未読の方がいたら、ぜひ下記リンクから試し読みしてみて下さい。
現在15話まで公開中で、何か日に日に公開話数が増えてます(笑)
読めばきっと、このラブコメが好きになる。
※追記
先週のサンデー(No34)の初恋ゾンビが凄すぎて、初恋ゾンビ好きが突然ブログのコメント欄に現れはじめて何か楽しかった(笑)
こういう風に、みんなで初恋ゾンビの話がしたいし、みんなで応援していけたら良いよね……!!
1巻感想
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ドキドキが丸見え。「初恋ゾンビ」が素晴らしいラブコメなんだ! - いつかたどり着く
5巻感想
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6巻感想
ここが青春の最前線!尊さをも感じさせる「初恋ゾンビ」が、最高なんだ!! - いつかたどり着く
7巻感想
赤面力が高いラブコメは素晴らしいのだ!「初恋ゾンビ」がやっぱり最高に面白い - いつかたどり着く