いなくなった大切な人のために、歌い続ける。
こんな展開から、覆面系ノイズはスタートします。
表紙のニノという少女の家の隣に、モモという男の子が住んでいました。
二人は仲良しで、いつも一緒に歌っていました。
歌えば悲しいことはふっ飛ばし、嬉しさは2倍になる。
二人で歌えば、まさに無敵。そういう関係でした。
小学校に上がっても、二人は仲良しでした。
相手を想う感情に、知らない名前がつくようになっていたかもしれませんが。
このシーン、凄く素敵だと思った次のページでもう落とされる。
いや序盤の展開は割とジェットコースターです。油断するとやられる。
モモが去り、悲しみに満ちたニノの心を満たしたのはユズという少年でした。
歌っているニノに対し、自分の声を見つけたというユズ。
とにかく、ニノの声に彼は惚れていました。
作曲をしているユズですが、ニノと出会ってからは作曲が捗るってレベルじゃないようです。
ニノもまた、ユズの曲が大好きでした。
モモに届くように、目印になるようにユズの曲を歌う。
何とも不思議な関係です。
モモの手紙を読んでニノが暴走した時、止めてくれたのはユズでした。
歌えないといっていたはずなのに、ニノのために歌って。
もうこの頃にはニノのことを好きになっていたはずですが、応援するような言葉を彼女に送ります。
会えると信じて、届くと信じて歌えと。
この後さらにユズもいなくなるという展開ですが、この言葉がニノを支えることになります。
モモに、ユズに会えるように。信じて歌い続けると。
この序盤の展開、あるキャラの回想なんですが、これがニノではなくユズというから面白い。
序盤こそニノ視点だったのが、ユズ視点と混ざり合っていくんですよね。
そして高校生になり、ユズとニノは再び出会うことになりました。
ニノの方はユズに心から会いたがっていた一方で、ユズは会いたくなかったと思っていました。
会えば落ちるしかないから。本当に好きになってしまうから。
しかしここまで読んでいると、落ちるしかないからとか言っておきながら割と最初から落ちてるんですよね。
会いたくないというのは、自分を偽っているからで。
本心は、どう考えたって会いたかったんだろうなと思います。
ずっとニノを想って、彼は曲を作っていたんですから。
そんなに想っても、手に入れられないことがあるのを突きつけるからこの漫画は面白い。
ニノを交えて、初めて演奏することになった舞台。直前で流れる、ニノとモモの思い出の曲。
暴走し狂うように歌うニノ。
誰に向けての歌か、誰に向けての想いかが強く強く、ユズにそして読者に伝わってきます。
ニノの声を自分のものだけにしたいユズ。
自分の声は、ずっとモモだけのものだというニノ。
会えたけれど、近いけれど。互いの求めるものはまだ遠くて。
もうね、読ませるよこの漫画は。私のこの表し難い感情をどうしてくれるんだ(笑顔)
このニノの暴走を止めるのは、彼女の名を呼んだ誰かの声。ニノの想い人が、彼女の名を呼ぶ声。
もうね、息を飲んだ。
大音量の中で、とうてい聞こえるとは思えない。
それでも確かに、ニノはその声を耳で捉えていました。
どれだけ、それを欲していたかが強く伝わるシーンです。
ユズがニノの声を欲するように、ニノもまたその声を欲していることが読み取れました。
でもさ、まだ出会ってくれないんですよ。ニノとその声の主は。
凄く面白いけど、1巻は私の中では寸止めしてくる憎い巻です。もう夢中なんですけどね!
3巻まで一気に買ってしまいました。
ちなみにユズがニノと再開した時、周りにどうでもいいと言う一方でこれです。
アレ、一番可愛いキャラってユズじゃね?
というわけで、この漫画のヒロインはおそらくユズです。単行本のオマケ漫画見てもユズです。
ニノのことをアリスって呼ぶのは自分だけ、というあたりに強い独占欲が感じられます。
恋を応援する言葉を吐いている心の内は、全く逆のことを想っていたり。
切ないなあ。
覆面系ノイズは私の中では今年イチオシの少女漫画です。
男でも読めます。間違いなく面白い。
画像引用元
覆面系ノイズ(福山リョウコ)白泉社