いつかたどり着く

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青春と恋愛の全てがここに。「青のフラッグ」は今年を代表する漫画になる

甘く、切なく、そして苦しい。


そんな凄い作品が、ジャンプ+に誕生してしまった。
このブログでも何回か取り上げたいと思っていたけど、単行本が出るまで我慢した。
単行本が発売したタイミングで、多くの人に知ってもらいたいと思った。


……その割には、発売から1週間が経過してしまったけど。


この漫画は、高校生の青春と恋愛を描いた漫画だ。
息が詰まるほど、呼吸を忘れるほど、その切なさに魅せられて。


この漫画は、きっと忘れられない漫画になる。
1話を読んだ時、私は心からそう思った。

始まりは同族嫌悪から

主人公の一ノ瀬は、スクールカースト的に言えば底辺に近いところに位置している。
今風に言えば、陰キャというのか。
それでも、近い立場のオタクたちとそこそこ楽しく学生生活を過ごしていて。


陰キャなので、基本的に大人しく過ごしている一ノ瀬。
人当たりもまあ、普通なのだろう。
だからこそ、この漫画のヒロインである二葉にキツめなのが、印象的な導入だった。


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一ノ瀬に向ける視線は、明らかに好意的なものではなくて。
どんくさくて、いつも俯いている。
それは、まるで自分を見ているかのようで。


一ノ瀬にとって、二葉は鏡のようなものだったのだろう。
だからこそ、自分がそういう行動や姿をしていることを自覚してしまう。
それが嫌で、いつの間にか二葉も好意的な存在ではなくなっていた。


しかし、一ノ瀬は二葉と出会ってしまう。
クラスメイトだから出会うも何もないのだが、鏡としての二葉ではなく、「二葉」自身と出会ってしまう。
変わろうとする二葉と、出会ってしまうのだ。


一ノ瀬の親友である、トーマに恋した彼女。
トーマはスクールカースト上位で、普通に考えれば釣り合いにくい。
それでも彼女は、少しずつ行動していく。


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甘酸っぱすぎて震える展開。


何なんだこの可愛い生き物は!?
赤面している女の子は最高に可愛いって、改めて実感する。
恋する女の子の前では、私たちはいつだってニヤニヤが抑えきれないのだ。


一ノ瀬は、少しずつ二葉に心を開いていくけれど、二葉はあまりにも純真で、言葉を真に受けて想像以上の行動を取ってしまう。
トーマの好みの髪型にしたいという二葉の意見を、ショートくらいばっさり変えないと効果がないと軽く言う一ノ瀬。
この一言で、本当にショートにしてくるとは私だって思わない。


でも、二葉はそれをしちゃう女の子だ。
忘れてはいけない、彼女もまた陰キャだ。加減をちゃんと理解できていないのだ。
それが普通の女子が失恋でもしない限りしない行為だと言うことを、彼女は感覚として分からないのだ。


重い。


一ノ瀬がそう思っても、不思議ではないだろう。
自分の一言で、想像以上の行動を平気でしてくる。これが重くないわけではない。


でもそれは、無垢故の行動。
だからこそ、重いのだけれど。自分のせいで、二葉が後悔しかねない行動をすることが、一ノ瀬は怖いのだ。
トーマに好きな人がいることを知った上で、二葉にそうさせてしまったことが、苦しいのだ。


それでも、頑張ると彼女が言った時から。
こらえきれなくて涙が溢れても、変わりたいと彼女が自分に言い聞かせるように言った想いが伝わったその時から。


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一ノ瀬の心の中に、二葉の存在が浮かび上がる。
他の人より少し内側に、二葉が存在するようになるのだ。


迷いの中生きていく、高校3年生のその時期に、一ノ瀬の中に二葉の居場所ができる。
そうしてこの物語は、甘酸っぱさを超えた青春を生み出していく……

友達でいること


一ノ瀬の中で、次第に二葉の存在が膨れ上がっていく。
トーマとの恋を応援していたはずなのに、トーマのことを嬉しそうに話す二葉の姿に、どうしようもなく胸がざわつく。
それを認めないように目を背けるほど、気持ちは大きくなっていく。


親友を好きな女の子。
その子に対し、その恋を応援すると決めたのに、特別な想いを抱いてしまった場合、どうするか。
拒絶するのだ、関係を。


嫉妬する自分が嫌で。惨めな自分を見たくなくて。


それは多分、解決することには繋がらない。
逃げ続けても良い。でもそれは、逃げ切れるだけの精神力を持っている人間だけだ。
一ノ瀬は、そういうタイプではない。
逃げて、逃げ切ったように見えて。延々とその想いを引きずっていくタイプだ。


そして、彼は知らなかった。
相手が追いかけてくることもあるということを。


一ノ瀬自身は、自分は二葉に取って「トーマのついで」くらいな存在だと思っていたのだろう。
分かっていないのだ。
本音で話せる異性が、彼女に取ってどれだけ特別な存在か。
自分を勇気づけてくれた人間が、どれだけ大切なものなのかを。


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狂おしいほどの青春が、溢れていた。


トーマとは違う形で、一ノ瀬もまた二葉にとって特別な存在になっていた。
作中で随所にそれが感じられるけど、一ノ瀬だけがそれに気づいていなくて。
言わないと分からない。伝えないと、彼らは分からない人種だ。


だからこそ、この言葉は強く強く響く。
苦しくても、辛くても、想いを押し隠せば側にいられるのなら。
そうして一ノ瀬は、気持ちを隠しながら側にいることを選択する。


切なくて、苦しい。


いずれは、隠しきれない時が来ることが分かっているから。
それは、甘い甘い夢。隠していれば、側にい続けられるという甘美な夢。
現実は、残酷だ。
側にいればいるほど、日に日に想いは大きくなっていく。好きだという気持ちが膨れ上がっていく。


いつか、想いがこぼれてしまう日がきっと来る。
それが分かっているから、どうしようもないくらいの切なさを感じてしまうのだ。


彼らは、本当の心を隠している。
一ノ瀬だけじゃない、トーマも、そして二葉の親友である真澄も。


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まだ文字にはなっていないけど、トーマや二葉も難しい恋をしているのが分かる。
それはもしかしたら、伝えることさえ難しい気持ちかもしれないのだ。


甘酸っぱさも、確かにある。
しかしそれ以上に、この漫画は切なく、苦しい。
呼吸が止まるほどの青春が、所狭しと詰まっている。

心臓の痛む音が、聞こえてきそうだ……

終わりに


ジャンプ+は毎年凄い作品を出してきている。
全体的に見ればまだ裏サン系の方が充実しているかもしれないけど、絶賛したくなるような漫画があるのはジャンプ+の方だ。
web漫画サイトとして後発ではあるけど、その拡充っぷりが凄まじい。


ともかく、青のフラッグにすっかり打ちのめされてしまった。
今年を代表する漫画になるというのは、結構真面目に言っている。
青春系の作品が好きな人は、絶対に読むべき漫画。


未読の人は、まずは試し読みから。

shonenjumpplus.com

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