いつかたどり着く

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いつかたどり着く

漫画とかの駄文書く。

落ちていく彼女の手を、もう放さない。ミステリアスな同棲恋物語「星空のきみ」が面白い!

空に落ちる。


恐らくそこそこ生きてきた人ならば、一度は似たような言葉を聞いたことがあるかもしれない。
空なんて、人からしたら上にあるもの。昇っていくもの。
その空に、落ちる……というのは、普通のことではない。


「星空のきみ」のヒロインには、その普通ではないことが起こっていた。
家の天井が、彼女に取っては地面で。
外はもう、果てのない落ちていくだけの空が広がっていて。


そんなヒロインを好きな主人公が、ヒロインとどう向き合っていくかを本作では描いている。
ミステリアスな展開の中に散りばめられた、主要キャラの「共感」したくなってしまう感情。
もっと読まれてほしいくらい、面白いのだ。

浮いている幼なじみ

見上げれば、天井に、きみがいる。

帯に書かれた一文はなかなかに詩的だが、事実だ。
主人公・クウトの幼なじみ・星崎チカは浮いていた。
登場時から、宙に浮いていたわけではない。クウトの家を訪れた時の彼女の足は、まだ地面に着いていた。


幼なじみの彼女との久々の会話の中で、告げられた悩み。
それが体が浮くということだった。


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当初はこのように、せいぜい宙に「浮く」くらいだった。
頑張れば、足が地面につくレベルの。
それがいつの間にか、「浮いている」状態の方が当たり前になってしまっていた。


家の天井が、彼女の地面で。
彼女を探す時、クウトは見上げるようになっていて。
明らかに、それは異常な光景だった。


しかし、チカはそこまで深刻な様子は見せない。
基本的にはあっけらかんとしていて、割と冷静に事実を受け止めているように見える。


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天井を地面とした生活になれるより、二人きりでいることになれることの方があとらしい。
……このヒロイン、なかなかの大物である。
デフォルメの姿が可愛かったのは、私だけの秘密だ


ただ、クウトに対する不満は時折見せている。
クウトが彼女を避ける態度を見せた時、特に顕著だ。


クラスのヒエラルキーで言えば、上位のチカと下位のクウト。
告白した時の振られた記憶も手伝って、クウトはチカと距離を置くようになっていた。


このあたりの「心の距離」が、チカが「浮く」ようになってしまった原因かもしれない。
少なくとも、チカがストレスを感じた際にそれまで浮いていたものが落ちているので、「感情」が大きく関係しているのは間違いないだろう。

落ちていく彼女の手を、もう放さない。

この物語の主要キャラは、3人だ。
主人公・クウトと、ヒロインのチカ。
そして、クウトを好きなミレイ。


1巻では、このミレイが大きく動かしていく。
狂気を持って、物語を動かしていく。


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帯のラブコメって文言絶対ウソだろ


ミステリアスな雰囲気を漂わせながらも、幼なじみが再び心を通わせていくような展開を見せていた展開を、ミレイが一気にぶち壊していく。
狂気で、雰囲気を塗り替えていく。
以前からチカを陥れるために悪い噂を流し、ついには同調圧力を持って、クウトにも迫る。


想像して見て欲しい。
クラスメイトが、クラス全員から「悪」と認識された状態のことを。
カースト上位者でも、それを否定することは難しい。カーストの順位が入れ替わってしまうかもしれない。
底辺のものに至っては、同意する以外の選択はないのだ。
否定することは、最底辺になることを意味するからだ。


例え事実とは違うことでも、対面的には同調するのが正解かもしれない。
裏では今まで通り、親しく接することも可能だ。


だけど、クウトはそうしなかった。
彼女の手を放さないと、誓ったから。


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同調圧力に屈しない。言うのは簡単だ。
だが、実行するのは何より難しい。
このシーン、私は非常に好きなのだけれど、立場が強くないクウトが勇気を振り絞って同調圧力を否定するから好きなのだ。


元から彼が強い立場ならば、単なるカッコいいシーンで終わっていたかもしれない。
だけど、彼のように立場が弱い人間が、振り絞って立ち向かう姿は、痺れるくらいカッコいいのだ。


死んでもこの手だけは放さない。
空に落ちそうになったチカの手を掴んだ時の、クウトの言葉だ。
でもこの言葉は、そのシチュエーションだけのものじゃない。
チカに寄り添って生きるという、決意なのだ。


少年の心に、火が灯るのが分かる。
雨の中走っても、その火はもう消えることはない。
好きな子を守るために、頑張ろうとしている。変わろうとしている。


その熱が伝わってくる展開が、非常にグッとくるのだ。
ヒロインのために男の子が頑張る展開に、熱くならないわけがないのだ。


昔守ってもらった記憶。側にいてもらった記憶。
二人が積み重ねた時間。幼なじみとして、一緒に過ごした時間。
それら全てが、クウトを動かす。スクールカーストなんて枠そのものをぶっ飛ばすくらいのエネルギーさえ、感じさせてくれる。


そんな本気の想いが、響かないわけがないのだ。


いじめられていることを問われ、抱えてきたものが込み上げたのか、チカは涙をこぼす。
嫌だ。怖い。マイナスの感情を思い出す。
それでも、「守る」という主人公の言葉が、彼女を動かす。

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泣きながら。それでも、クウトの目を真っ直ぐに見つめて。
鼻水まで垂らしているのに、不覚にも可愛いと思ってしまった。
この漫画はもう!こういうのが良いんだよ!

終わりに

この漫画は分からないことが多い。
なぜ、チカは浮いてしまうようになったのか。ミレイの狂気じみた行動を手伝っている、前川という変な人形はどういった存在なのか。
分からないことだらけの中で、キャラの頑張ろうとする気持ちは非常に好感を持って共感できるのが、この漫画の魅力の1つだ。


私たちは「共感」したい。
強くない男の子が、好きな女の子のために頑張ろうとする気持ちは、いつの時代だって共感したいのだ。


二人が心を通わせていくことで、宙に浮く事象や展開そのものがどうなっていくか、非常に楽しみ。
帯のラブコメには、騙されないように(笑)

※試し読み
www.sunday-webry.com

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