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こういうラブコメが読みたかったんだ!「初恋ゾンビ」ヒロインたちの現在地

初恋ゾンビが好きです。


何が好きかって、ヒロインたちの抱える気持ちを、読者に考えさせる描き方をする部分です。
単純明快な王道ラブコメも良いけど、何を思い何に悩んでいるのか、読者に簡単につかませないラブコメは、あまりない。


今週号は、ヒロインたちの現在地を確認できた回でした。
ニヤニヤもしたけど、ふとした表情から読み取れる切なさを、僕は伝えたい。

伝えられない気持ち。指宿くんの現在地


周りには女の子であることを隠している指宿くん。
普段はしっかりと男の子用に振舞っていますが、ふとした時に見せる女の子の顔は、破壊力抜群です。


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こちらはちょっとしたアクシデントで、タロウに抱きつきそうになった時の表情。
抱きつきそうになって、慌ててこらえた指宿くん。
でも本当は抱きつきたかった。


そんな感情が、表情や仕草から容易に読み取れます。
ニヤニヤが止まらない可愛さ。


でもそんな風に読者をニヤニヤさせておきながら、指宿くんはまた、読者を切ない気持ちにもさせてきます。
お化け屋敷が怖い江火野さん。
逃げまわって、最後にタロウを見つけた時、一直線に彼のもとに走って抱きつきました。


それを見ていた、指宿くんの表情がもう……ね。


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素直に抱きつける江火野さん。それができない自分。
自分もこの手で、タロウに抱きつけたら。
握りしめた手は、そんな切ない気持ちを感じさせるものでした。


江火野さんがタロウに抱きついた時の、指宿くんの届かないものを見るかのような表情は、僕の心を締め付けるものがある。


女の子だと伝えられない、今の指宿くんの立ち位置は、非常にもどかしさを覚えます。
諦観している風に見せながらも、何かを期待しているようにも見えるから、読んでいて切ない。

近くて遠い距離。江火野さんの現在地


隠れたメインは指宿くんだったかもしれませんが、今週号も江火野さん回でした。
2巻の帯に三角関係と書かれ、ヒロインと見なされていないことに抗議するかのような活躍です。


江火野さんはタロウの幼なじみですが、彼女の存在が、指宿くんにも影響を与えているのが読み取れます。
この漫画で、1番素直にヒロイン的な行動を取れるのは、彼女です。


オバケを怖がって、タロウに抱きついたシーンがまさにそうです。


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指宿くんは、精神的な問題でタロウを抱きしめることができない。
イブは、物理的な問題でタロウを抱きしめることができない。


そんな現状で、タロウを抱きしめられるヒロインは、江火野さんしかいないんですよ。


彼女がヒロイン的な行動を取ることで、他の二人の切なさが際立つ。
素直にタロウの隣にいることができない、葛藤が際立つ。


ただ、江火野さんは江火野さんで、問題がないわけではありません。
タロウとの距離が、幼なじみで固定されてしまっている。


抱きしめられた時のタロウの表情、見ましたか?
あの男、ほとんど照れもしない。


周りからいくら人気があっても、タロウにとって江火野さんは、仲の良い幼なじみという認識です。
それが強すぎて、それ以上の関係になるビジョンが読者にはなかなか見えません。


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指宿くんに、タロウがどんな存在か聞かれた時、江火野さんはタロウはタロウだと答えます。
よく分からない答えではありますが、代わりのいない存在だということは伝わってくる
今はまだ、無自覚、ということなのでしょう。


それでも指宿くんが、「僕の思い出は手強いよ」と言わずにはいられなかったのは、タロウのことを話す江火野さんの横顔に、隠し切れない好意を感じたからなのか
どこか嬉しそうに、タロウのことを話してましたからね。


タロウの幼なじみである江火野さん。
近いようで、恋愛という観点で見ると、その距離は遠いように思えます。
タロウがなあ、意識しているようには見えないんだよね(笑)
だからこそ、キーホルダーを渡した時に、江火野さんの笑顔に少しドキドキしたのが新鮮だったんですが。


届きたい、届かない。イブの現在地


遊園地編のイブは、当たり前ですがタロウの周りに人がいるため、いつもに比べれば大人しい。
だからこそそれを気遣って、タロウが最後に観覧車に乗るシーンが際立つ。


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遊園地編で、一番デートらしい一連のやり取り。
お互いに、相手への好意を隠す必要がないというのもあるかもしれません。


このシーンで、タロウがイブのことを大切にしているのが分かります。
タロウとの距離が1番近いのは、間違いなくイブです。


しかし、彼女はタロウに触れられない。
どれだけ想っても、側にいることはできても、タロウを抱きしめることはおろか、手をつなぐことさえできない。


イブのためにタロウが何かするたび、その背景が頭の中にちらついて、どうしても切なさを感じてしまいます。


近いのに、届きたいのに、届かない距離。
タロウが、そしてイブ自身が、今後どうイブという存在と向き合っていくかを考えると、切ない気持ちになっちゃうんだよなあ。

終わりに

いやあ、結構長々と書いてしまった。
こんな風に、初恋ゾンビは気になるピースをちらほらとばらまいているので、読者はヒロインたちの秘めた気持ちやその背景を、考えずにはいられません。


それでいてニヤニヤさせてくれるんだから、この漫画は素晴らしい。
でももっと、指宿くん以外のヒロインも赤面させて良いんだよ(笑)


指宿くんやイブに切なさを感じる僕ですが、江火野さんもタロウに意識してもらえない的な展開になってくると、切なすぎて心臓が大変なことになりそう。自宅にAED用意しておかないと!


そうそう、テンパる江火野さんが可愛かったです。
これは夏の肝試しも描いてもらわないと!ね、峰浪先生?

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