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この短編集は……凄い!「Latin」の泣き顔に心打たれた

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Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集)Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集)
高畠 エナガ

集英社

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表紙を見た時から、実はちょっとだけこれ面白いんじゃないかとか思ってました。
泣き顔が非常に印象的だったので。
何かを訴えかけてくる、そんな泣き顔です。


こちらの作品、短篇集ということですが表題作の「Latin」がページ数的に3分の1を占めています。
そのページびっちりと、熱い内容が描かれていました。


ラテンというアンドロイドを自宅前で拾った渡辺。
捨てられたアンドロイドらしく、ボロボロという表現が実に合っています。


元々は精巧な女性型アンドロイド。
ただ現在は手当をしたとはいえ全身に包帯を巻き、髪もボサボサ。
性格の方もヤサグレているように見受けられます。


家事の手伝いもしてくれないラテンと渡辺はケンカが絶えず、ラテンはそのたびに捨てれば良いじゃないかと自暴自棄のように吐き捨てる。
そのたびに、命を持っているものは捨てられないと答える渡辺。
アンドロイドに対し「命を持つ」という認識が、素敵だなと思ったり。


ふと家に帰った時、ラテンの持っていた写真を見てしまう渡辺。
そこには、家族と幸せそうに写っているラテンの姿がありました。

家出したと言ったラテンですが、実際は捨てられていた。
記憶は消えているのに、体の内側いっぱいに貼られた幸せそうな写真がいつまでもラテンに問いかけをさせる。
どうして、と。こんなに愛されていたはずなのに、どうして捨てられたのかと。


大好きだったアンドロイドを捨てられた経験がある渡辺。
ラテンの辛さ、大好きなラテンを捨てられた子供たちの辛さを彼は知っていました。


スキャン0001


だからこそ、重みのある言葉。
好きな人と別れる辛さを知っているからこそ、何とかしてあげたい。
渡辺の素直な気持ちが、固くなだったラテンの心に響いているのが伝わって来ました。

悲しくて泣いていた涙に、嬉しみの涙が混ざったのが分かります。
ラテンの泣き顔は、崩れながらも美しいんですよね。
ずっと見ていたくなるような魅力を感じます。泣き顔が素敵な作品は、名作が多いような気がする。


この日を境に、渡辺とラテンの生活は変わります。
ラテンの元の持ち主を探したり、体を修理したり。
その時の表現が、非常に印象的なものでした。


未来へ進むような 過去へ還るような 不思議な時間が流れた


二人の関係が前進し良好なものとなった今、未来へ進んでいるように感じるでしょう。
その一方でラテンの体を直したり、元の持ち主を探す行動は、ラテンの過去へと還っているように感じるのだと思います。
渡辺にしたら、ラテンを拾う前の自分に戻っているような感覚もあったのかもしれません。

この表現が強く心に響きました。今のこの状況を、これ以上に表せる言葉を思いつかない。
一件矛盾するような言葉が当てはまる、稀有な時間だということが伝わって来ました。


渡辺はラテンの髪を磨いで、体を直して。ケンカもして。
ラテンは渡辺のために、今までやらなかった料理なんかをして。
少しずつ、けれど着実にお互いの距離を縮めていく二人の姿は、心地良いものでした。

その一方で、どちらもラテンの過去を気にする描写がたまらない。
特に渡辺が、ラテンの過去のことを考えて、自分を傷つけたシーンが。
このシーン、さり気なく流されていますが渡辺は傷ついていました。


ラテンが自分の中で大切な存在になっていることにこの時点で気づきながら、ラテンには「還る場所」があるということを思い出し、彼は泣いていました。
いつかラテンが自分以外の誰かの元に「還る」ことを、悲しんで泣いていました。

感情を文字にしたわけではないけれど、痛いほど伝わって来ました。
絵で感情を訴えられると、文字にする以上に響くもんだな。

渡辺と親しくなったラテンは、もう信じられないくらい可愛いんですよ。
修理が終わってピカピカになって、渡辺が自分を意識し始めているのを察してニヤニヤしている姿とか最高です。


スキャン0002


渡辺が何かを伝えようとしているのを知って、待っているラテンが可愛すぎる。
髪をくるくるする仕草が、実に人間の女の子らしい。
ちょっといたずらっぽく微笑んでいる姿に、思わず頬が緩んでしまいました。


ああもうラテン可愛すぎる!!


やっぱり、女の子は笑っている顔が一番可愛いなと改めて感じました。
ラテンの笑っている顔は、それくらい魅力的だから困る。ちょっとドキドキしちゃう。


このあとの終盤の展開が、実に熱かった。

スキャン0003


家族と渡辺の間で揺れる、ラテンの心。
自分の居場所が分からず、涙が溢れました。
どうにかできるのは、渡辺だけ。ラテンが待っているのは、渡辺の言葉だけ。

もうこの辺は息を呑んで読んでいたと思います。まさに作品に引き込まれた。
ラテンの涙が、辛さを全力で読者に訴えてきます。
泣き顔の破壊力が本当に凄まじい。
ラテンの感情を、これでもかというくらい表現している。
こんな泣き顔が、心を打たないわけがない。


どのような展開を、そして結末を迎えるかはぜひ短篇集を読んで確かめて下さい。
感想サイト失格かもしれませんが、言葉ではあの熱量を半分も表現しきれない。

百聞は一見にしかずとは言いますが、この作品は本当に読んで確かめて欲しい。
Latin以外の作品も本当に素敵でした。一番はどうしてもLatinになってしまいますが。


大満足の1冊でした。本当にオススメです。
……短編1話に対し、かなり長い感想になってしまったな(笑)


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