いつかたどり着く

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今、この漫画をおすすめしたい。君といる日は「君曜日」

ヤマカムさんの感想から、相当面白いなとワクワクしていたら、その期待を超えるくらい面白かったです。
早く次が知りたいとページを捲る手が早くなる一方で、少なくなっていくページ数を惜しみもっと読んでいたいと思うほどに。


君曜日 ─鉄道少女漫画2─
中村明日美子
白泉社


今作は、鉄道少女漫画に登場した少女にスポットが当たった作品。
ケーキ屋の裏の鉄道模型室。
ちょっとした秘密の場所。そこでしか会えない人がいる。


毎週木曜日にだけ会う年上の男性に、亜子は密かな恋心を持っていました。
1週間のうち、一番楽しみなのは休日の土曜日でも日曜日でもなく、その人に会える木曜日。
奥さんも娘もいることを知っていながらも、恋をしてしまいました。


好きって気持ちがかなわなくても 一方通行でも
やっぱり 恋だと思うの…


という友人の言葉は、多分真理でしょう。
恋って、きっと打算的なものじゃない。自分じゃコントロールできない部分から、発生するのかもしれない。


自分なんて気にしていないかもしれないのに、木曜日は朝にシャワーを浴びて。鉄道模型室に入る前に、おしゃれして。
少しだけ、気にして欲しい。
少しだけ、見て欲しい。


写真を撮りたくて追いかけて、見つかって。少しだけ話すことができた夜。
名前を可愛いと言われただけなのに、頬が朱に染まるほど嬉しい。


スキャン0001


恋する乙女は、なぜこんなにも可愛いのでしょうか……


何かもう、見ている私の頬が緩んで元に戻りません。
口元についたクリームに気づかないほど嬉しかったのでしょう。そのちょっとした幼さもまた愛おしいと思います。


そんな亜子を気にかける少年が一人。同じ塾に通う小平です。
彼が亜子に好意を持った理由は、はっきりとは分かりません。
ただ初めてあった時、その横顔が綺麗だった。そんな単純なものかもしれません。


ただ私、この少年が大好きです。
気取ること無く、亜子に何でもないように話しかける小平。
実際は、少し話せただけで嬉しい。いつもと違う亜子が見れたことが嬉しい。


素直な良い子なのが、伝わってきます。
亜子のために一生懸命で、一緒にいたくて。会いたくて。
ちょっと馬鹿なところもありますが、だからこそ真っ直ぐです。


少しずつ、亜子が彼に対して心を許していく様は心から良いなあと思います。
亜子が乗り気じゃなかった秩父へのSLでの小旅行を楽しめたのは、小平が思っていた以上に良い奴だったからでしょう。


そんな中、亜子は小平が好きという少女に出会います。
その少女に小平とのことを聞かれた時に、はっきりと何でもないと、全く好きじゃないと否定できませんでした。
その少女は、どうしようもなく小平のことが好きで。涙が溢れるほど好きで。
間近でその姿を見てしまった亜子にも、それが伝わりました。
けれど、自分の小平に対する気持ちは定まらない。


小平に付き合っちゃう?と言われた時も、馬鹿じゃないの、と一蹴することもしませんでした。
何も言うことなく、電車に乗り込むだけで。
無神経なのに。いいかげんなのに。
それなのに彼の言葉が、顔が頭の中に残っていて。


その後風邪を引いてしまい、5日ぶりに登校してきた彼女を迎えたのは、違う学校にいるはずの小平。多分、ずっと待っていたのでしょう。休んでいる間もずっと。伝えるために。


スキャン0002

お友達からお願いします。


この一言を言うために、小平は亜子が学校に来る日まで待っていました。
この真っ直ぐさが、たまらなく気持ちいい。
好きなこのために、ここまでできるその姿は同性から見て眩しいものを感じました。


小平の姿を視認しつつ、通りすぎようとする亜子。
しかし彼の思わぬ一言が、彼女の足を止める。


この場面で足を描くのが素敵だなあと感じました。
揃わない二人の足の向きが、僅かな一瞬を切り取ったことを強く伝えてきます。
通り過ぎるその一瞬に、大切な言葉が発せられたのだと言う事を。
その時の亜子の表情がまたたまらない。もう、頬を染めた女子は可愛すぎますね!


確実に縮まっていく距離。
だからといって、亜子が抱いた想いが消え去ったわけではありません。
小平とのデート?中にまさかの再開。


ハプニングが多すぎて、考えがまとまらずゴチャゴチャして。
思いっきり泣きました。そして彼の家族を見て、彼の「ありがとう」を聞いて、亜子は笑顔を作りました。
恋の決着を感じながら、それでも笑顔を作りました。
見ているこちらの胸が、少しだけ苦しくなりました。心を揺さぶってくるなあもう!


試着の途中でハプニングが起こったので、店の服をそのまま着ていた亜子。
代金は小平が払っていました。払おうとする亜子と断る小平。そしてこのシーン。


スキャン0003


この「間」が本当に中村明日美子は素晴らしい。
吹き出しのないこのコマによって、「似合ってるし」という小平の言葉が亜子の胸にどれくらい響いたかを読者の胸に染み入るように伝えてきます。
そして顔を上げた先には、少し照れた様な小平の横顔。
ああ、なんて素晴らしい青春を描いているのでしょうか。丁寧に繊細に描かれた心情の機微を、私達は味わうことができます。


様々な事情からなかなか買えずにいた今作ですが、買って良かった。
心からそう思っています。


鉄道少女漫画
鉄道少女漫画
posted with amazlet at 13.03.22
中村 明日美子
白泉社
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中村 明日美子
白泉社

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