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「死にたがりと雲雀」可愛さと、熱の伝わる涙。このマンwebでも高評価の理由が分かる

私みたいな弱小ブロガーは及びではないけれど、仮にこのマンガがすごい!WEBの編者だったらその月の1位にしているくらい、気に入っている作品です。


死にたがりと雲雀(1) (KCx ARIA)
山中 ヒコ
講談社 (2014-05-07)

いつもより、あえて表紙を大きく表示しました。
この表紙から、すでに色々と「面白い」漫画の雰囲気を感じ取って頂けるんじゃないかと思います。

時は江戸時代。
町外れの荒れ寺に、一人の浪人が寺子屋を建てたところから物語は始まります。


街では人が刺されて金品を奪われる事件が起きており、疑われる条件は揃っていました。
活発な3人の子供が、寺を訪れてみると想像とは違った優しげな侍に出会います。


身元を探るためにきた3人ですが、なぜか学問を学ぶことに。
寺子屋だから当然といえば、当然かもしれないけど


普段使っている数字がどういった文字なのか教わり、いつの間にか夢中になる子どもたち。
お気に入りの文字ができるなど、初めてのことに感動しているのが読み取れました。
柔らかい、素敵な表情です。こういうところで、物語に惹き込まれる。


子どもたちにとって、寺子屋は楽しい場所になっていきますが、やはり寺子屋に事件の操作は及び始めました。
当初とは打って変わって、自分たちで先生を守ろうなんて考えます。


が、子どもたちのリーダー格は犯人の正体を知ってしまい、先生を犯人に仕立てあげようとする展開に。
最終的に先生の無実は証明され、真犯人は捕まりました。


それは雲雀にとって、父との別れを意味するものでした。

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こぼれ落ちる涙は、私達に確かな熱を伝えてきて。


盗人の子供だから、平気で嘘をつけると。
そう強がることで、雲雀は何とか立ち上がっています。


盗人の子供であるという認めたくない事実にすがるかのようにして、彼女は立っています。
今にも崩れ落ちそうなのが、痛いほど分かる。


支えが必要な彼女を、先生は抱きしめました。
盗人の子供ではなく、腕利きの職人の娘であり、自分の大事な寺子だと言って抱きしめました。


心に響いてくるものがありました。確かな熱が、私の心に届いてきます。
涙の熱さも、心の暖かさも。
全部漫画を飛び越えて、読者に伝わってくる


雲雀は先生に抱きしめられたことで、また立てるようになりました。
父がいなくなったということもあり、身元を引き受けてくる人間を探すことになります。


盗人の子供という風に見られてしまうこともあり、先々で厄介払いのような対応をされる雲雀。
住んでいる長屋の人も手伝ってくれますが、思惑もあって親身ではないこともあります。


部屋に帰ってくる者もなく、独りの夜を過ごす雲雀。


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手のひらが濡れて、ほっぺたが痒くなって初めて気づく。泣いているということに。
悲しさや、寂しさが伝わってきます。
拭っても、後から後から落ちてくる涙。


こんなに可愛い子供なのに。何も悪くないのに。
フィクションではあるけど、救われて欲しいと願わずにはいられない。


迷惑をかけるからと、外では泣けない雲雀を誰か幸せにしてくれ……と。


悪いことばかりではなく、長屋の何人かが身元引受人になることを提案してくれます。
泣きそうになるくらい嬉しいことでしたが、彼女はそれを選びませんでした。


選んだのは、泣ける場所。


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涙が落ちても良い場所こそが、先生の側でした。
先生を犯人にしようとした自分が、お願いできる立場ではないことを分かってなお、彼女はここに来ました。


彼女にとって、泣ける場所こそが家なんですよ。
父がいなくなった今、先生の側こそが家なんだと思います。


長屋の人たちの暖かさも、雲雀は嬉しかったでしょう。
しかし、雲雀は彼らの元では泣けない。迷惑がかかることが、痛いほど分かるから。


もちろん、先生にも迷惑はかかります。しかし、迷惑をかけることを許してくれた先生ならという気持ちが雲雀にはあるのでしょう。


柔らかく、可愛いこの容姿には、たくさんの熱と気持ちが詰まっています。
それが時に涙となって溢れる。
とにかくこの漫画は、涙が心に響いてくる。


他にも色々書きたいシーンがありますが、ぜひ読んで堪能してもらいたい。
可愛くて熱を持っているのは雲雀だけじゃなくて、3人組の1人である男の子も可愛さを確かな熱を持っています。


もう本当に、子どもたちが可愛いんですよ。
小さく柔らかな輪郭から、たくさんの感情があふれていて。


心からオススメします。この熱を、体感して下さい。

500年の営み (Feelコミックス オンブルー)
山中 ヒコ
祥伝社 (2012-07-25)
Latin 高畠エナガ短編集 1
高畠 エナガ
集英社

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